「千駄ヶ谷」の自慢は確かな教育力。文部科学省から「準備教育課程」として指定されている千駄ヶ谷日本語学校(本校)、日本一の大学院進学実績を誇る千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校(付属校)、卒業後の選択肢が幅広い千駄ヶ谷外語学院(外語)の三つの日本語学校をグループ内に擁する。各校で教鞭を執る実力ある日本語教師や、留学生活・学習環境を支える職員の素顔に迫る。第1回は、太陽のような明るさで、学生を笑顔にする勝間田恵美先生。スプーンひと匙分、掘り下げてご紹介。
時期が違ったら、
日本語教師になっていなかったかも
国語と体育が得意な子供だった。自然に文学や言葉に興味を持つように。大学で学んだ英会話での経験や、海外で日本語を教えたことのある恩師の影響で「日本語教師」を志した。
いわゆる「就職氷河期」世代。大学卒業が近づいても、周囲には将来を不安視する雰囲気が漂っていた。「どうせなら好きなことをしよう」と、数社の内定を断り、卒業後すぐに千駄ヶ谷の養成講座の門を叩いた。
そうだ、「外国人」になってみよう
日本語教師には、留学などを通して外国人を身近に感じた経験のある者が多い。日本語学校で勤務するうちに、「旅行以外で『外国人』になったことがないな」という思いをもつようになった。「じゃあ、私がなってみよう」2003年、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊に参加。コスタリカへ飛んだ。
周囲に日本人はおらず、ホームステイでの滞在。スペイン語を話せなければ、使用する教室の予約さえできなかった。「自分も語学の教師だから『どうすれば早く覚えられるかな』と自分を実験台にしていた」と振り返る。「実験台」の日々で得た語学習得の鍵は「とにかく使ってみること」。「必要がないと人は覚えない。伝えたいことがあって初めて、それに合う言葉を探すんですよね」
「この先生と勉強すれば大丈夫」
安心感を与えたい
学生と向き合う中で大切にしているのは「学生自身が何をしたいのか、どうしたいのか」ということ。小学校や中学校と違い、学生はすでに「大人」。意志を持って来日した学生のプライドを傷付けたり、教師の考えを押し付けたりすることのないよう気を配る。
「私たちにできることは、彼らの目標を叶えるためのサポート」と話す。「『この先生と勉強したら大丈夫だ』という安心感を与えられるようになりたい」と微笑んだ。
好きな日本語は
「どうにかならないことはない」
趣味のトライアスロンでは、国内大会だけでなく、世界大会に出場した経験も持つ。「スタートした瞬間から『ゴール、早く見えないかな』と思ってますからね!」とおどけつつ、「自分が頑張れば、その分だけ結果が出るところが好き」と語った。
好きな日本語は「どうにかならないことはない」。「同僚に言うと『それはそうだけど…』と言われる」と言う。「多少失敗しても、死ぬわけじゃないし」そう笑い飛ばす姿に、芯の強さの一端が見えた気がした。